第5章 おおさわぎ
「…ねぇ杏寿郎、杏寿郎は杏寿郎なんだよね?」
私の前方、煉獄さんの後方にいる彼女は泣き出しそうな声で呟いた。煉獄さんは少し驚いて女の子の方を振り向く。
「君は田中少年の姉か!田中少女だな!」
煉獄さんは女の子に向かって「うむ!よく来た!」と頷く。あんまり人の話聞いてない。というか状況呑み込めてない。
「私のことは花子って呼んで」
「花子少女か!改めてよろしく頼む!」
女の子、改め花子ちゃんは煉獄さんに名前を呼んでもらえてとても嬉しそうだ。
「うん…杏寿郎…///」
「それはそうと、道場に来たということは君も鍛錬に興味があるのか?君も道場に入門するといい!」
花子ちゃんはもじもじしながら「鍛錬は興味ないけど…///」と言った。私はとりあえず花子ちゃんが落ち着いてくれたことに安堵して、その場からゆっくりと距離をとる。花子ちゃんのことは煉獄さんに任せて逃げてしまいたい。
「中彩!今日の夜はまたあの料理を作ってくれ!肉が葉にくるまれている…」
「わーーーーー!」
ロールキャベツね!ロールキャベツはわかったけど、やばい、花子ちゃんが物凄い怖い顔でこっちを見ている。霊能力者でない私も分かる。物凄いメラメラと燃えるような黒いオーラが見える。
「ねぇ杏寿郎…この人は杏寿郎のなんなの…?」
「む…?」
煉獄さんもただならぬ気配を察知したらしい。少し眉間に皺を寄せて花子ちゃんを見る。
「中彩か?中彩とは食住を共にしている。」
「は…?」
おいー!!!!
花子ちゃんの顔が般若のように怖くなった。私はもう感情がどこかに飛んでしまい、ただ、「ああ終わった」とだけ思った。
すると花子ちゃんは突然煉獄さんの腕を掴み抱きついた。そして私を睨みつけながら
「杏寿郎は私のだもん!!」
と言った。
煉獄さんは油断していたのか間合いに入られて驚きながらも少し嬉しそうな様子で「花子少女!君は鍛錬すれば強くなれる!」と一人だけ話の筋がおかしい。そんな煉獄さんに構わず、なおも花子ちゃんは続ける。
「原作で出てきた時に一目惚れだったの。私には杏寿郎しかいないの。私のものなの。」
煉獄さんの腕を自分に引き寄せながら花子ちゃんは続けた。
「映画だって5回は見に行った!」
彼女は煉獄さんの顔を見て「杏寿郎は花子のだよね?」と言った。