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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第5章 おおさわぎ


だめだ…どうしたらいいんだ…

私は頭がクラクラした。煉獄さんはそんな花子ちゃんの言葉に黙っている。

「杏寿郎はどうして生きているの?杏寿郎は…」

私は花子ちゃんの言葉にはっとした。そして反射的に体が動いていた。距離にして私の歩幅で1歩半。周りの音が聞こえなくなるあの感覚。私の中の全てがこの先の言葉を煉獄さんに聞かせてはいけないと言っていた。

私は背伸びをし、煉獄さんの両耳を手で覆う。

「映画で死んじゃったのに」

「む?」

煉獄さんは私が耳を塞いだことに驚きながらも、花子ちゃんの言葉は聞き取れなかったのか私の方を見てキョトンとしている。私は高鳴る胸、急速に動き出す時間、音、世界が戻って煉獄さんと見つめ合った。視点はあっていなかったが。

「でも生きててよかった!私に逢いに来てくれたんだね!」

花子ちゃんは嬉しそうにそう言うと煉獄さんの耳を塞いでいる私から煉獄さんを引き剥がすように距離をとった。

「とにかく!中彩とか何とか知らないけど!調子に乗らないで!」

私にあっかんべーをする花子ちゃんに隣にいた煉獄さんが花子ちゃんに向き直る。

「目上の人間への敬意が足りない。中彩は君よりも年上だろう、花子少女。」

諭すような表情でそう言った。その目は先程とは打って変わって静かに花子ちゃんをとらえていた。

「俺のことは良い、好きに呼んで構わない。だが、中彩に対して見たところ君はなにか誤解をしているらしい。彼女は君が邪険に思うような害のある人間ではない。頭を冷やしなさい。」

花子ちゃんは煉獄さんにピシャリと跳ねられて固まっている。そしてゆっくりと瞳に涙を溜め始めた。

私は二人を見ながら、複雑な思いになる。花子ちゃんは、煉獄さんが大好きなんだ。大好きで大好きで、ずっと会いたかったんだ。やっと会いたかった人に会えたと思ったら隣に私がいて、すごく嫌な思いをしただろう。悪気があった訳では無いはずだ。

「あの…」

私が口を開きかけた時、稽古場の方から小さな少年がひょっこりと出てきた。

「煉獄先生!なにしてるのー!打ち合いしようよー!!!」

その声に煉獄さんは「すまない!長話をしてしまった!」と稽古場に戻った。私と花子ちゃんが取り残される。

「…覚えてなさいよ」

花子ちゃんは一言私にそう言い残して一緒に稽古場へ入っていった。
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