第5章 あの時…
8月31日、時刻は午前9時。
今日は午後から錆兎と約束があるので、午前中にやる事を一通り終わらせておこう。
一人暮らしの為家の事は一人でしなければならないのだ。
今日は天気が良い、布団を干そうと2階の自室へと向かう。
明日から9月か。
花里は新学期だな。
うまくやれるといいが。
暫くしたら様子を聞いてみたいが、鬱陶しがられるだろうか。
などと考えていたその時。
ーーピンポーン
家のチャイムが鳴る。
ーーピンポーン、ピンポンピンポンピンポンッ
一体何なんだこの鳴らし方は…
イタズラか?
近所にこんなイタズラをする小学生はいなかったはずだが。
まぁ良い、ここはきちんと叱ってやろう。
それが大人の役目だ。
何と言うべきか考えながら玄関のドアを開ける。
するとそこには……
「おはようございます冨岡さ〜ん!迎えに来ましたよ!」
小学生、ではなく…
大学生、甘露寺蜜璃がいたのだった。
「甘露寺…?」
何故ここに?
迎えに来ました?
約束などしていただろうか?
色んな疑問が頭に浮かび混乱していたが、
「あぁ、おはよう」
とりあえず挨拶だけ返しておいた。
状況が全く分からない。
何から聞いていいのか分からず立ち尽くす俺に向かって
「冨岡さん準備出来てますか?」
などと聞いてくる。
益々訳が分からない。
「甘露寺、すまないが…準備とはなんだ?」
「へ?」
「ん?」
甘露寺は俺が言ったことの意味が分かっていないようで、2人してその場で固まってしまう。
甘露寺は、一体何しに来たのだろう…
誰か教えてくれないだろうかと困り果てたその時、
「おはようございます冨岡さん」
少し遅れて到着したらしい花里が甘露寺の後ろからひょっこりと顔を出した。
思わぬ登場に俺の鼓動がトクンと跳ねた。
先程ちょうど考えていた所だったので、少し嬉しく思う。
「おはよう花里」
挨拶を返すと頬を染めにこにこと笑顔になる花里。
可愛らしいと思った。
「冨岡さん、今日はよろしくお願いします!」
甘露寺に続き、花里まで訳のわからないことを言うので、俺は益々混乱した。