第3章 再会
「俺の方から質問をしてもいいだろうか?」
「はいどうぞ!」
「伊黒とはどういう関係なのだろうか。妹だとか言っていたのだが…」
さっき錆兎と話をしていた時もそうだが、正直昨日からずっと気になっていたのだ。
本当の兄妹だったら申し訳ないのだが…全く似てない。
それを聞いた花里は目をぱちくりさせていた。
「え、妹?じゃないです!確かに妹みたいに思ってくれているんですけど」
「そうなのか」
「はい。私蜜璃ちゃんと幼馴染なんです。うちのお向かいが蜜璃ちゃんのお家で」
「ほぉ」
ではあの門構えの立派な大きな家は甘露寺の家だったのか。
知らなかった。
「伊黒さんとは蜜璃ちゃんと付き合い出してから知り合いました。とても良くしてくれて、私にとっては優しいお兄ちゃんです」
「そうか」
あの伊黒が優しいお兄ちゃん?
…全く想像出来ない。
笑顔で話してくれる花里を見ると、とても良好な関係のようだ。
「という事は、俺の家は甘露寺か伊黒から聞いたんだな?」
「はい!伊黒さんに地図書いてもらいました!」
見せてもらった地図は、分かりやすく目印を付けて丁寧に書かれていた。
「伊黒さん地図書くの上手ですよね!」
「…そうだな」
何故だろうか。
錆兎の時もそうだった。
花里が伊黒を褒めているのを聞いてモヤッとしている自分がいる。
そんな俺を不思議そうに見つめる花里と目が合った。
顔に出ていただろうか。
「どうかしました?」
「いや、何でもない」
一旦落ち着こうと目の前に置いておいた麦茶を一口飲んだ。
「私もお話してもいいですか?」
「あぁ、どんどん話してくれて構わない」
「ふふ、はい。…あの時、学校に行けてないって話しましたよね?」
「…覚えている」
初めて聞いた時、何故この子がと、はらわたが煮えくり返ったのを覚えている。
その後も気になっていたが、こちらから聞くのは憚られたので、話してくれると言うのであれば有難い。
一言も聞き漏らすまいと俺は花里をじっと見据えた。
「あの…、あんまりじっと見つめられると緊張します…」
「…すまない」
どういう体勢でいれば良いか分からなくなったので、俺は麦茶を少しずつ飲みながら聞くことにした。
そんな俺を見て、花里は可笑しそうにふふっと笑った。