第2章 きっとこれは恋じゃない
「不安はあるでしょうけど、でも楽しい事もあるはずよ!」
「楽しい事?」
「うん!そうねぇ、例えば……恋とか!」
「恋…」
「そう、恋よ!あぁ、柚葉ちゃんはどんな男の子にときめくのかしら?今から楽しみだわぁ!」
恋…ときめき…
今まで私には無縁だと思っていたけれど、これから私もそういう経験を経て、大人になっていくのかな…
そもそも、恋って何なんだ。
「ねぇ、蜜璃ちゃん」
「なぁに、柚葉ちゃん?」
「蜜璃ちゃんは、伊黒さんに恋をしたんだよね?」
「えぇそうよ!恋をしたし、今もしてるわ!」
「ごほっ…⁈」
お茶を飲んでいた伊黒さんは盛大に咽せた。
本人を前になんちゅー話をし出すのかと思ったに違いない。
でもごめんなさい伊黒さん。
どうしても、蜜璃ちゃんから聞きたいの。
恋とはどういうものなのか、お勉強させてもらいたい。
「それってどんな感じ?」
「ぇええ⁈改めて聞かれると照れちゃうわね!うーん、そうねぇ…、小芭内さんの事考えるとね、胸がドキドキするの」
「うんうん」
「それでね、会えない時も、今何してるのかしらぁ?とか考えちゃったりね」
「うん…」
「寝る前も小芭内さんの事思い浮かべて寝るとね、とっても良く眠れるのよ。あら、気付いたら一日中小芭内さんの事考えてるわね。きゃーっ、やだ私ったら、恥ずかしいわぁー!」
蜜璃ちゃんは顔を隠して照れまくり、伊黒さんは頭を抱え「もう充分だ…」と盛大に赤面していた。
なんだかとんでもない事言わせちゃったかなと少し反省した。
そっか、ドキドキして一日中考えちゃうのか…
そう思い、今までを思い返してみるけれど…思い当たる節がない。
やっぱりコレは、私には縁の無い話なのだろう。
そう自分の中で納得したその時、ふとあの人の顔がチラついた。
…冨岡さん、元気かな。
そう思って思い出す時はあるよ?
でも時々だ。
流石に一日中…、それは無い…かな?
また会いたいなとは思ったけど、それはあの時お喋りが楽しくて、またお話ししたいなーって思ったからだ。
ハンカチも返さなきゃだし。
まぁドキドキはしたけど、あんな綺麗なお顔で見つめられたらそりゃドキドキするでしょ?
冨岡さんもうめっちゃイケメンだったんだよ。
そういう事だ。
だからこれは恋じゃない。
きっとそう…だよね?