第1章 出逢い
花里と話して、俺も何と無く気持ちがスッキリしていた。
心なしか足取りが軽い気がする。
寂しくなった家に帰りたくないと思っていたのに。
また会いたい。
そう思っている自分に驚いた。
「…あ」
…連絡先、聞いておけば良かったと早くも後悔した。
だがこれだけ家も近いし、また会えるような気もした。
「おーい、義勇ー!」
家の前で錆兎が待っていた。
「電話出ないから心配しただろ」
見ると俺のスマホに着信履歴が数件。
全く気付かなかった。
「すまん」
「ちゃんと帰ってきたならいいんだ。義勇今日うち来いよ。一緒に晩飯食おう」
俺が1人になってしまったのを心配して、度々こうして錆兎は誘いに来てくれる。
親友の優しさに感謝した。
錆兎がいてくれて本当に良かったと思った。
錆兎の家から帰宅し、夜布団に入ると、ふと頭に浮かぶのは花里の事。
ちゃんと母親に話は出来ただろうか。
いい方向へ向かえば良いが…。
いい笑顔だった。
あの笑顔がずっと続くいい未来になればと願う。
友達でも恋人でもない、今日初めて知り合っただけの女の子の事をこんなに考えている自分を少し可笑しく思いながら、いつもより心穏やかに眠りについた。