第1章 Episode:01*
それからの私の学校生活は、それはもう悲惨なものだった。
転校初日に聞こえてしまった悪魔の呟き通り、私はクラスの女子達からパシられている。
おかげで誰が何を食べるだとか、よく買う飲み物だとか、大体は把握してしまった。
今日も、また。
「私、メロンパンとカフェオレね」
「私はー…おにぎり2つと、あとお茶」
私は、私は、と雪崩のように一斉に言われても、今じゃもう混乱しない。
大抵毎日同じもの頼まれるし。
いつものように手の平に貯まっていく大量の小銭を見て、自腹してくれるだけいいよねと思った。
お金を小銭入れにしまって教室を出ると
「嫌なら断ってもいいんだぞ」
ふいに声が降って来た。
顔を上げると虎杖くんが心配そうに私を見つめている。
「なんなら、俺がいおーか?」
申し出に勢いよく首を横に振る。
気を遣ってくれてるのは嬉しいけど、そんなことされたら逆恨みされて、パシリどころじゃ済まなくなる。
「あ、ありがとう。大丈夫。でも、わたし、いじめられてるとかじゃないから、…その、あんまり関わらないでいてくれた方が、助かる…かな」
本音だった。
虎杖くんのようなクラスの人気者に、私みたいな冴えない奴が絡んでるだけで目をつけられやすのだ。
これ以上の面倒なことは勘弁してほしいので、正直、ほっといてくれた方が助かる。
「ちょっと何してんの!?昼休み終わっちゃうじゃんか!」
「5分以内に行って来なよ。過ぎたら罰ゲームね」
「!!」
教室から聞こえてきた声に身体が反応する。
背中に響く笑い声。
こんな風に、笑いの種にされるのも日常茶飯事だった。
虎杖くんが何か言いたげな顔をしていたけど、最後まで聞かずに私は購買へと足を急いだ。
*