第2章 Episode.02
何か言う前に、ぎゅーってされて声が出せない、息も出来ない。
「俺も好き。超好き」
そう紡いだ唇は、その言葉を最後に音をなくして、頬にかかる、虎杖くんの髪の毛。
唇に感じる熱は、夢か現実か区別がつかない程、どこまでも心地良くて。
その癖、どこかに飛んで行ってしまいそうなふわふわとした感覚に、堪らなく不安を覚えた。
縋るように、広い背中にしがみつく、そしたら虎杖くんも更にぎゅうってしてくれて。
虎杖くんが私を好きだと言った。
その、事実が。
嬉しいのか切ないのか。
愛しい、のか。
胸が一杯で、苦しい。
くるしい。
「……」
「ん……っ」
唇を、重ねるだけの、深い、深い、キス。
角度を変えるたびにまた深くなって。
飲み込まれて、食べられて、しまいそう。
「……っんで……?」
少しだけ、唇が離れた。
「なんで、こんな、嬉し……」
「……っ」
「俺、なんか変。こんなの……」
荒い吐息の中、うわごとのようにそう繰り返す虎杖くん。
本当に、訳が分からないみたいに、泣きそうな声で、何度も何度も言うから私まで、また泣きそうになって。
“信じられない”
“どうして、私なんか”
そんな、いつもの卑屈な自分が消えていく、残るのは、愛しさ。
迷子の子供のような虎杖くんに対する、愛しさ、だけ。
「……変じゃ、ないよ」
私も、嬉しいから――――。
募る想いに身を任せて、今度は私が虎杖くんを、強く、強く、抱き締めた。
*