第1章 Episode:01*
人間って、死ぬ気になれば何でも出来る。
息を切らしながら全力疾走して、五分間死ぬ気で走り抜きどうにか罰ゲームとやらは免れた。
疲れ果てて机にうなだれる私を完全に無視して、お昼飯を食べながら会話に花を咲かせる女の子達。
誰でもいい…感謝か労いの言葉を私にかけて…。
「大丈夫か?」
「………」
いや、誰でもいいとは言ったけどあなたではないの……。
「虎杖くん…私に、関わらないで…て」
「うん聞こえてた。でも無理、そんな死にそうな顔してるヤツ無視するとか」
机に顔を伏せたままの私に虎杖くんが、はいコレ、と紙パックのいちごオレを机の上に置いた。
「お疲れさん。あ、甘いの平気?女子こういうの好きそうだなぁって勝手に選んだんだけど」
「……うん、平気」
良かった、と言って、額に、ぴたり。
ひんやりとした湿った感触に思わず顔を上げると。
「顔真っ赤だぞ。ちゃんと冷やせよ」
視界一杯に広がるピンク色のラベル。
それは、虎杖くんがくれたいちごオレで、冷たくて、気持ち良い。
「じゃあな」
「あ、うん……」
いちごオレを私に渡して席を立つ虎杖くん。
私は遠くなっていく背中をただ目で追うことしか出来なくて。
……何も、言えなくて。
(お礼、言いそびれちゃった……)
一口含んだいちごオレは、びっくりする位甘くて。
そして美味しかった。
*