第1章 Episode:01*
ドキッとしてしまう位、格好良い人だった。
淡い桃色の髪の色も奇抜な髪型も、剥き出しの右耳に光るシルバーのピアスも、大きめのパーカーの上から着ている制服も、全てがその人にしっくり合っていて。
両目の下にある傷跡さえも、よく似合っていた。
厚い瞼の下の真ん丸い瞳の中に、私の間抜け面が見える。
「だっけ?転校生。愛想ねぇし地味だけど」
「へぇー。何それ」
虎杖、と呼ばれたその人が、何でもなさそうに言う。
「あれ?泣いてんの?」
「っ!」
ぽつりと言われて、頭に火花が散る。
え、私…泣いてた…!?
「ち、違っ!な、いてなんか…な、い…」
私は涙を手で拭いながら、精一杯に強りをみせる。
教室が、一瞬にして静まり返った。
虎杖って人も、真ん丸い目を更に真ん丸に開いて、私を見ている。
でも、それはほんの少しの間で。
「え、普通に可愛いじゃん」
「は……?」
にこっと微笑まれて、拍子抜けしてしまった。
「俺、虎杖悠仁。ちなみに今、がいる席は俺のね」
「へ……あっ!ごめ、」
誰か教えてよ!
慌てて荷物を纏めていると、のはこっちね、と隣の席を指差された。
急いで隣の席に移動する。
やばい、恥ずかしい。絶対顔真っ赤だ。
一人焦りまくる私をじっと眺める虎杖くんにも、そんな私達のやり取りを興味深そうに凝視しているクラスの人達の視線にも、その時の私は気付かなかった。
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