第1章 Episode:01*
鼻の奥がツンと痛くなったその時、ガラッと教室の扉が開く音がした。
「はよー」
「うーす」
「もう昼だぞ、虎杖」
「え、じゃあ、こんにちは」
虎杖、って人とクラスの人達の間に流れる穏やかな空気を、肌で感じた。
険悪な雰囲気が少しだけ和らいだ気がしてほっとしたけど、ずっと下を向いていたものだから、ゆったりと近付いて来るその気配に、私は全く気が付かなかったんだ。
「あれ、知らない子が居る」
「!」
頭の上から降ってくる、間延びした低い声。
何だか、優しい響きに思えて。
恐る恐る、顔を上げてみる、と。
*