第2章 Episode.02
(皆の前で、あんな、普通のことみたいに)
私、やっぱりからかわれてたのかな。
虎杖くんにとってはやっぱり何でもないことで、私ばっかり考えて、夜も眠れなくて、意識して、ぐるぐるして。
私だけ、特別なこと、みたいに。
「虎杖くんの…ばか……」
立ち止まって、息切れする身体を支えるように膝に手をついた。
胸が苦しいのは、きっと走ったからじゃない、目頭が熱くなっていく。
(気付きたくなかった)
けど、もう遅い。
一度分かってしまったら、引き返せない、知らない振りなんて、出来ない。
(私は、虎杖くんに構われて、やさしくされて、触られて)
嬉しかったんだ。
お疲れさま、って買ってくれたいちごオレも、私が嫌いな身体を好きって言って抱き締めてくれたことも。
その他にも、たくさん、たくさん…笑ってくれることすら嬉しくて。
(だめだ、もう)
溢れる。零れ落ちてしまう。
ぽたりと落ちたそれは、足元のコンクリートが受け止めたものの、染み込んで消えてはくれなかった。
*