第2章 Episode.02
「うまいでしょ」
「……うん、美味しい」
ほんとにおいしくて、頷くと。
「一人じゃ食い切れないから、一緒に食べよ」
「え……」
「半分こ、な」
目線を合わせるようにしてにっこり笑う虎杖くんに、何故だか胸が熱くなった。
じわって、何かが広がってくみたいに、泣いちゃう寸前に似てる。
(……ずっと、思ってたことだけど)
虎杖くん。虎杖くんはー…
「……やさしい、よね」
「え……?」
「やさしいよね、虎杖くんって」
いつもふざけているようで、人をおちょくっているようで…ほんとは、誰よりも周囲の人を気に掛けてる、感じがする。
「ほら。虎杖くんも、食べて」
「あ……うん」
私に促されるようにして、虎杖くんも一口。
美味い、と呟く虎杖くんに、自然に頬が緩むのを感じた。
「…そんなこと、初めて言われた」
「え?」
「やさしい、とか…」
スプーンをくわえたまま、何処かぼーっとした様子で虎杖くんが言う。
「そう、なの?意外だね…」
「って変わってるな」
「………」
えー…虎杖くんにそれ言われるの…なんかムカつくなぁ…
何だか腹立たしくて、未だに上の空の虎杖くんにもう一回あーんってされたけど、一人で食べれるよとスプーンとグラスを奪い取った。
若干残念そうな虎杖くんの声が聞こえたけど、気にしない。
バニラアイスとクリームが溶けかかったところを一口。
やっぱり、すっごく美味しい。
*