第2章 Episode.02
盛り上がる会話を他所に私がそんなことを思っていると、話題の中心である虎杖くんが、男の子達の会話に水を差した。
「やってないよ」
「は?」
「だから、途中でやめた」
………………
「はああああああ!?」
一瞬の沈黙の後、野太い声が綺麗にハモった。
皆、信じられないとでも言うように、虎杖くんを凝視して口をパクパクしている。
「うそだろ……」
「相手が命乞いしても泡吹くまで殺り続ける虎杖が…?」
ちょっ……それは、こわいんだけど…というか、さっきから本当にこれ高校生の会話??
「えーだってさー」
困惑を隠しきれない同級生一同に、本人の口から真相が告げられる。
「がやめてって言ったから」
………………
「はああああぁー!?」
またもや綺麗にハモる重低音。
いや、でもほんと…何を言ってるの…?
「やめて悠仁!って言うもんだからさー、ね!」
すーっごく良い笑顔でそう振られて、白目を剥きそうになった。
あれ…私、呼び捨てで呼んだっけ……?
止めなきゃって夢中だったから、さっぱり思い出せない。
私が頭を抱えて記憶を辿っている間に、周囲がまた騒めき出していた。
「何で虎杖があんな冴えない奴の言うこと聞いてんだ……?」
「いや、もしかしたらって……」
本当は只者じゃないんじゃ…って雰囲気になってきてる。
まったくの誤解だと叫びたい。
普通じゃないのは、あなた達と隣でにこにこ笑ってる虎杖くんです。
私を凝視する視線に耐えられなくて、私は教科書で顔を隠しいつも以上に俯いて、時が過ぎていくのを待った。
*