第2章 Episode.02
あれから数日、お昼休みになると虎杖くんが私に声をかけ続ける。
「ねぇ。ー」
「………」
「おーい。ちゃーん」
「………」
「さーん。聞こえてますかー?」
「………」
いい加減無視しないでよ、と隣で虎杖くんがぷぅと頬を膨らます。
ちょっと可愛かったけど、私の決意は固い。
あの保健室での出来事以来、私は虎杖くんと一言も口を聞いてない。
というか、私が前みたいに虎杖くんを直視できない。
前は、相変わらずカッコいいなーなんてぼけっと見惚れる余裕もあったんだけど、今は無理。
目を合わせることもままならないのに、話すだなんてもっての他だ。
そんなことしたら、心臓が爆発して死んでしまう。
「。怪我、もう平気?」
「!」
スッと頬を撫でられて。
やわらかい声色に促されるように、自然にコクりと首が動いた。
「あ……う、ん……」
「よかった」
安堵したように目を細める。素直に、やさしい顔だと思った。
というか、死ななくて良かった。心臓はドクドクしてるけど。
「つーか虎杖。ちゃんと隣の組のやつシメてきたんだろーな?」
「当たり前のこと聞いてんじゃねーよ。虎杖のことだから全員再起不能だろ」
ギャハハと凶悪な笑い声を上げるクラスの男の子達。
私に目を付けていた女の子達は虎杖君の一件で、私に関わることを恐れ何もして来なくなった。
嫌がらせがなくなったのは嬉しいけど…その他の女の子達全員から避けられるのもそれはそれで寂しい…。
*