第1章 Episode:01*
「案外…見た目より、おっぱいあるんだな」
「!」
息を飲むってこのことだ。
瞬間、ひく、って喉が鳴る。
(なに、これ、ちょ…)
キャミソールの上から、虎杖くんの大きな両手。揉み込むみたいに、やらしく、動いて。
「……っ」
「超やわらかい…女の子って感じする」
「や、だ…」
「直接触りたいんだけど、だめ?」
「!っ…だ、だめ…ゃあ…」
衝撃が強すぎて、まともな声がでない。
その代わり、何だか変な感覚が爪先から這い上がって来るのが分かった。
今まで、感じたこと、の、ない。
「ここ、気持ちい?」
「な、ん……」
「顔、耳まで真っ赤」
―――――。
真っ白になった頭とは裏腹に、瞬時に湧いてきたのは、虎杖悠仁という人間に対するある種の殺意だった。
「変態!彼氏でもないのに触らないで!」
「っ!?」
夢中で振り上げた手の平は運よく(悪く?)虎杖くんの頬に直撃したようで。
虎杖くんが怯んだ隙にベットから抜け出し、落ちていた制服を羽織るだけ羽織って、急いで出口へと走った。
でも、中途半端に高まった熱さのせいで、足が震える。腰に力が入らない。
(最悪……っ)
恥ずかしかったのに。駄目だって思ったのに。
本当は、ドキドキしてて。
心のどこかで止めて欲しくないって思ってた。
「虎杖くんのバカっ!」
悔し紛れに叫んだ負け惜しみにも似たそれは、虎杖くんにどんな風に届いたのだろうか。
ベットの上でぽかんと放心している虎杖くんを残して、私は力が入らない腰を叱咤しながら、保健室を後にした。
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