第1章 Episode:01*
「…は……」
不意に背けられた顔。
それに便乗してさらりと流れた髪の毛のせいで、表情が見えない。
「俺が、恐くないのか」
「虎杖くん……?」
「恐いん、だろ?だってあの時」
―お前、震えてた。
(あのとき……?)
記憶を遡ってみる。
あの、時。
『…-ゆう、じ、悠仁くん!』
(あ……)
しがみついて、必死で、名前を呼んで。
確かに。確かにその時私は。
「…うん、恐かった。全然違う人みたいで…それに、虎杖くんがどっか遠くに行っちゃう感じが、して」
「え……」
「すごく、こわかった」
あの時、縋るように抱きついた私は。
単純に、行かないでって気持ちで一杯だったのかもしれない。
この手は絶対に離しちゃいけない、って。
*