第1章 Episode:01*
二人で保健室に向かうと、生憎先生は外出中で。
もう授業が始まってる時間だったから、保健室には他の生徒の姿もなくて、辺りはうるさい程の静寂に包まれていた。
ドアに掛けられた“外出中”というプレートを無視して、虎杖くんがずかずかと中に入って行く。
「いいのかな、勝手に入ったりして」
「いいだろ?鍵開いてんだし。それにも早く手当てしないと」
「へ……」
言ってる意味が分からなくてぽかんとしていると、薬棚を何やら物色している虎杖くんが、後向きのままちょいちょいと鏡を指差した。
不思議に思って覗き込んでみると、自分の顔の状態に思わず悲鳴を上げてしまった。
「わっ!」
「な、痛そうだろ?」
元から大した顔じゃないけど、ひどいことになってる。殴られた頬は赤く腫れていて、唇の端は切れて血が滲んでいた。
腕にも、小さな掠り傷が一杯。
「消毒するからここ座って」
「あ、うん」
消毒薬と脱脂綿を持って、準備万端で椅子に座る虎杖くんと向かい合う形で、私も同じように腰を下ろす。
虎杖くんの長い足の間に私の膝が挟まれてる状態。
近い。
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