第1章 Episode:01*
「何で止めんの…だってこいつらお前にひどいことしたじゃん」
その声は、今までに聞いたことのない程の冷たさで。
ゆっくりと振り向いた虎杖くんの目を見て、私は自分がぞわりと身震いするのを感じた。
瞳孔、開いてる。
表情も、何もない。
振り乱された髪の毛は、こんな時でも変わらず綺麗なのに。
虎杖くんのパーカーを握る手の平に、ぎゅうと力がこもる。
「だめ……もう、だめ」
「だから、何で」
「痛がってる」
私の言葉に、虎杖くんがクッと喉の奥で笑った。
「いいじゃん別に、こんな奴ら」
「ちが、……違う。虎杖くん、が」
―――虎杖くんが、痛がってる。
「え……」
何でか、そう感じた。
私だって正直こんな奴らどうでもいい。
でも、虎杖くんがこの人達を殴るたびに、虎杖くんの方が苦しんでるように見えて。
止めなきゃ、って。
「……うん、」
力が抜けていく、虎杖くんの身体。
「虎杖くん」
「保健室、行こっか」
「う…うん」
―――あんなに、嫌だったのに。
今だけは、虎杖くんがて呼んでくれたことが、すごく、すごく、泣きそうな程嬉しかった。
*