第1章 Episode:01*
「おい。ちょっと面貸せや」
「俺らと遊ぼー。ちゃん」
「……………」
販売機に着く前に、複数のいかつい男子生徒達に声をかけられた。
多分同級生。その後ろにはクラスの女の子達もいて…。
「オラっ!」
「っ!」
校舎裏に着いた途端、掴まれていた腕ごと引っ張られて、ザラザラとした壁に叩きつけられた。
痛い。あまりの衝撃に、ずり下がるようにその場に座り込んでしまう。
「何でお前みたいな冴えねぇ奴が虎杖のお気に入りなのかは知らねーが、あんまり調子に乗らねぇ方がいいぜ」
「……!?」
お気に入り?訳が分からない。
男の後ろで私をからかっていた女の子達がクスクスと笑っている。
そうか…この子達が私を脅すようにこの人達に頼んだんだ。
「お前みてぇな奴が虎杖の隣にいていいと思うなよ?」
「目障りなんだよ」
いつかの伏黒くんの言葉が頭を過った。
『敵も多いがあいつに憧れてる奴も多い』
今目の前に居るこの人達は、確実に後者の方だ。
警報が鳴る。
(駄目…ここに居ちゃ…)
虎杖くんの、足手纏いになっちゃう。
「おい待てコラ!」
走り出そうとした私の身体は、いとも簡単に連れ戻されて。
顔に、一発。お腹に、一発。
目の前がチカチカした。
「お前ら何してんの?」
激昂する上級生を押さえ込むように聞こえた、覚えのある間延びした声。
駄目だとは思っていても、ほっとしてる自分が居た。
「随分楽しそうだけど」
「てめ…虎杖……」
「男なのに女殴るとか最低だな」
同級生の肩越しに、虎杖くんの姿が見える。
未だにぶれる視界のせいで、表情までは分からなかったけど。
「虎杖、くっ……」
なんで、ここに。
言いたかった言葉は形にならずに千切れて。
骨が砕けるような鈍い音に、跡形もなく掻き消されてしまった。
*