第1章 Episode:01*
“俺は好き、だから”
あの日の、放課後、以来。
虎杖くんとは、クラスで唯一普通に話せるようになった。
更に、何となくいつも一緒に居るようにもなった。
というか虎杖くんが話しかけてくる。
何かと傍に置こうとするし、隙あらば膝の上に抱き上げようとしてくる。
「いいじゃん。俺、を膝に座らせてみたい」
「…絶対に嫌」
そんな私と虎杖くんの日常を見て一番変化したのが、私に目をつけていた女の子達だ。
睨まれることもからかわれることもなくなったし、何よりパシリにされなくなった。
それは嬉しいけど、一体何故。
何もないのが、逆に怖いのだけれど…。
「私、飲み物買ってくる…」
「あ、じゃあ俺、カフェオレ」
「………………」
「いちごオレも買ってあげるからー」
「……行って来る」
こんな感じで毎回いちごオレに釣られて販売機に走る私は、我ながら馬鹿みたいだと思うけど。
虎杖くんに買ってもらういちごオレは、不思議なことに本当に美味しくて。
今日もまた、受け取った二百円だけを手に握り締めて、販売機へ向かって走る。
その背中を、虎杖くんが頬を緩ませて眺めていることなんて露知らず。
伏黒くんが虎杖くんに焦った様子で話しかけていた。
「虎杖。は?」
「ん?今、飲み物買いにー…」
「女子達がやべぇことしようとしてる」
私はほんとに、ほんとに何も、知らなかったんだ。
*