第1章 Episode:01*
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「……そっか」
「?」
「うまかったんだ、いちごオレ」
「え、うん…」
「甘いの好き?」
「……嫌いじゃ、ない」
うそ、大好き。
これ以上ふっくらしたくないから我慢してるけど。
「俺は好きだよ」
伸びてくる虎杖くんの手。
コーヒーを受け取ってくれるのかなって思って、私も手を伸ばした。
けど、虎杖くんが掴んだのはコーヒーではなく。
私の、手。
「触ったら気持ちいいんだろうなーって思ってたんだ」
「な……」
「思った通りだった」
手の平から滑り落ちるコーヒー。
見上げると、やわく微笑む虎杖くんの顔。
それはいつものニコニコした笑みなんかじゃなくて、もっと、もっと、もっと。
優しくて、とろけそうな笑みだった。
骨張った虎杖くんの手が、感触を楽しむように私の腕を辿る。
「ふにふにしてて…きもちーな」
「なっ、ちょ…っい、たど、りく…っ」
「ぎゅーってしたいんだけど。だめ?」
「は!?だ、だめ!」
肩の辺りまで来ていた虎杖くんの手を振り払って、慌てて距離を取る。
虎杖くんは不満そうだ。
必死になりすぎて、言葉遣いを気にしてる余裕すらない。
「えーいいじゃん。触るだけ」
「だ、だめだよ!私、自分の身体嫌い!」
「俺は好きだけど」
「私は、大嫌い、なの……!」
いつの間にか、壁際に追い詰められてて。
背中には壁、前には壁に手をついた虎杖くん。
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