第1章 Episode:01*
「虎杖の奴、案外気に入ってんのかもな。お前のこと」
「…………」
昼休み。ひとりの男子生徒が私の机に腰掛けながら言う。
いや、私今ごはん食べてるんだけど……。
私のどいてほしい視線をスルーして、クラスメイトの伏黒くんが話を続けていく。
「あいつがあんなに怒んの、久しぶりに見た」
「は、はぁ……」
構われてんのか、私…からかわれてる、もしくは馬鹿にされてるだけなんじゃ……。
当の本人は二限目から教室に居ない。
なんかだるいからサボると言って出て行ったきり、戻って来ていないのだ。
「朝はビビったわ。女子にキレるなんて初めてだし」
「……あ、の………」
「あ?」
ぐるんと振り向かれ、鋭い目つきに肝を射抜かれる。
こ、こわい……けど、気になる。
「い、虎杖、くん、て、そんなに強いの……?」
「…知らないのか?」
「引っ越し、して来たばっか、だから…」
「………」
男子からも避けられてると思っている私が恐る恐る聞くと、意外にも伏黒くんはあっさりと教えてくれた。
「虎杖は尋常じゃない。この学校だけじゃねぇ、他校の奴らですら虎杖には一目置いてる。敵も多いがあいつに憧れてる奴も多い。でも虎杖はー…」
"普通じゃない"
伏黒くんの言葉に、心臓がどくりと音を立てた。
「同じはみ出し者でも、俺達とは何かが違う。普段はへらへらしてっけど、分かんねぇか?雰囲気とか。俺は絶対敵には回したくない」
「……でも」
友達、なんでしょ……?
私の問いに、伏黒くんは小さな声でああ。と呟いた。
「でも皆、心の隅では、虎杖のこと恐がってる」
とも、伏黒くんは言った。
*