第1章 チョコと煙草 *宇髄天元*
バレンタイン当日
俺は朝から女子生徒に呼び止められっぱなしだった。
両手には抱えきれない程の箱や袋。
漸く一人になれたのは昼休みだった。
もらったものを抱えたままいつもの屋上へ行くと、あいつの姿はなかった。
いつもなら先に来てるはずなのに…
煙草を咥えながら、いるかもわからない中庭の方に視線を向ける。
「お、いた。何やってんだ…?」
まさかいるとは思わなかったが、ホントにいて自分に驚く。よく見ると近くに男子生徒が一人いた。
あ、そういうことか。
バレンタインだしな…
これ以上見ているのは、気分が悪い。
見たくないものに蓋をするように、背を向けいつもの場所へ腰を下ろす。
「はぁ…当日に失恋かよ、かっこ悪っ」
自分を慰めるように煙草に火をつけ、空を見上げる。
自分の心のように、曇った空があった。
暫くして昼休みが終わりを告げるベルが鳴った。
思い腰をあげ、もらったプレゼントを抱えつつ授業の準備をしようと戻ろうとした、その時
がちゃ
扉が開いてが現れた。
「…はっ、はぁ、よかった、間に合って…」
先程の中庭でのことが過る。
「…っ、チャイム鳴ったぞ。教室戻れ」
つい冷たくつけ離した言い方をしてしまった。
だけど、これでいい。