第5章 群青の飛球 *不死川玄弥*
『素質は十分にある』宇髄さんのその言葉を裏切らないよう、勝利を勝ち取るために全力投球でこの回を抑えてやろうと意気込んだ。
だけど、状況は最悪だ。
やっぱり煉獄さんの肩は調子が悪くて、続けて四球を出して気付けばノーアウト満塁。
「タイム!…玄弥、交代だ。」
「…はいっ!!」
監督が主審に選手交代を知らせると、ミットを手に皆が集まるマウンドへ走った。
「不甲斐ないな、すまない…後は任せたぞ!こんな状況だが…お前なら守りきれる、自分を…皆を信じるんだ!」
「うすっ!任せてください、死ぬ気で抑えます。皆で勝ちに行きましょう!」
「へぇ…なかなかいい顔するようになったじゃねぇかァ、男見せてやれ玄弥!」
「おぅっ!お前のその腕でビビらせてやれ!おーしっ、ここから派手にいくぞお前らっ!!」
主将である宇髄さんのひと声に、力強い声で答える。一層、チーム一丸となった気がした。
マウンドに立つと、ちらっとスタンドの方へ視線を写す。と視線が合うと何かを叫んでいる、でも周りの声援がうるさくて聞こえない…よくわからねぇけど、取り合えずミットを掲げて答えた。
「キメツ学園高校、選手の交代をお知らせ致します。ピッチャーの煉獄くんが退きまして、新たにピッチャーに不死川くんが入ります、ピッチャーは不死川くん、不死川玄弥くん背番号17」
(よし……ノーアウト満塁か……ここはまず、一つ三振取っとくか)
アナウンスが流れると会場内がざわついた。
大きく振りかぶって一球に思いを込めて投げた。ズバンっと音を立てて宇髄さんのミットにボールが収まると、球場内が静寂に包まれた。
「お、おい……あいつって」
「あぁ、不死川の弟の方だ!」
「あんな奴隠してたのか、キメツ学園は…!!」
「「わぁぁっ!!!!」」
静まり返ったはずの場内は狂喜で一気にうるさくなる。空気さえも揺れるようなその歓喜…それを肌に感じると、ゾワリと鳥肌が立った。
俺をその気にさせるような感覚に、闘志が一層燃え上がる。