第5章 群青の飛球 *不死川玄弥*
練習が終わって誰もいないはずのグラウンドに、1人残って自主練をしていた。
(明日は初戦、か…なんとしても試合に出させて貰って活躍したいところだな。…それに、あいつにも謝りたい…謝るきっかけが欲しい。私情を試合に持ち込むなんてよくねぇことだけど、俺にとってはどっちも大事だ…)
念願のベンチ入りを果たせて嬉しい反面、との関係がまだ修復できてない。どう謝ろうかと考えながら部室に戻ると、入り口に蹲ってる人影が見えた。
「…こんなとこで何してんだ」
「お疲れ、待ってたの……ベンチ入り、おめでと」
小さく微笑んで見つめてくるの瞳はどこか切なそうだ。あんなこと言ったのにそれでもおめでとうって、真っ直ぐ俺に向き合ってくれる。でも俺は逃げるように「早く帰れよ」と吐き捨てた。またひどいことを言って傷付けてしまいそうだから…
「待って!!これ…」
横をすり抜けようとすると、腕を掴んで何かを握らされた。その手元を見ると指先には絆創膏が何枚も貼ってある。
(御守り…、まさか手作りか…?)
「玄弥には皆と別で作ったの。こんなことでしか応援出来ないけど…頑張って欲しいから」
「っ!……嬉しいけどさ、そういうの変に期待しちまうから止めてくれよ。俺、単純な奴だから…勘違いする」
の気持ちが読めない。なんでここまでしてくれる?幼馴染みだからか…?それとも本当に期待しても…悶々としていればに肩パンチされた。
「本当…バカなの!?こんなことしてて、期待させることするな…?女の子に恥かかせないでよ!野球が大好きで、野球ばかで…いつもどっか怪我するくらい夢中になってる…正直、野球にやきもち焼くくらい玄弥が好き!だから勘違いなんかじゃなくて…もっと期待して欲しい。」
「え……お前、何言って…」
怒ったような声だけど、その声音とは裏腹にの顔は、真っ赤だ。それを見てつられて俺まで赤くなる。顔を見られるのが恥ずかしくて手の甲で隠すと「玄弥まで赤くならないでよ!」と2回目の肩パンチをくらう。