第5章 群青の飛球 *不死川玄弥*
再びベッドに寝転んで、ぼーっしていると玄関から聞き慣れた声がしてきた。
「お邪魔しま~す。うわ~なんか久しぶりな気がする…玄弥、寝てるかな…?」
「どうだかな。部屋にいると思うから上がってくれ、なんか飲み物持ってくわ」
キシキシと音を立てて階段を上がる足音が俺の部屋の前で止まるとドアが開く。
「玄弥…よかった、起きてた。」
「なんだよ。」
「はい、これ。先生から課題預かってきたよ」
渡されたそれらを受け取ると、はそこに座り込んでスコアブックを出し始めた。勝手に何してんだ、こいつは…
「おい、用が済んだら帰れよ。」
「え…だ、めなの?昨日教えて貰えなかったでしょ?それに家に1人だとつまらないし。もちろん、玄弥に会いたかったのが一番なんだけどね!」
昨日と言われると反射的に身体がぴくっと反応する。会いたかった…?俺に気使ってそんなこと言って……?思ってもないことを簡単に。
(どういうつもりだ…こんな俺に同情でもしてんのか…?)
だんだんと苛立ちが増していき、気付けば怒鳴っていた。
「いいから帰れよ!!!」
「げ、玄弥…?どうしたの…」
の今にも泣き出しそうな声にはっと我に返る。でも、ここにいられる方が辛い…周りに迷惑かけておまけに謹慎になって、ベンチ入りさえ出来ない惨めな姿を見られるのが嫌だ。
「ねぇ、なんで私がマネになったか知ってる?」
「…は?なんだよ急に…」
「私がマネをやろうって思えたのは、野球を頑張ってる玄弥を側で応援したいって思ったからなんだよ。だから、野球から距離を置こうとしないで…?何があったか事情は分からないけど、今の玄弥は野球を遠ざけてる気がする。」
(俺の姿を見て…?なんだ、それ。バカじゃねぇの…兄貴にも勝てねぇような俺が惨めでそんなこと言ってんのか…?)
「…なんでっ……それで慰めたつもりか…?お前に俺の何がわかんだよ!?同情とかうんざりだ!!期待させるようなことするんじゃねぇ!!」
強引に腕を掴んで部屋から追い出すと、ドアを閉めてその場に蹲った。
完全に八つ当たりだ…痛いところつかれて、逃げようとしてた自分自身に腹が立つ。