第13章 library 菅原
これはもう恋
好きだーーー!
「あっ…そう言えば名前、何て言うの?」
「私ですか?1年の橘 歩です」
「歩ちゃんね!俺は3年の…」
「知ってます」
「え?」
「菅原さんですよね?」
「え、なんで知ってんの?」
普通に嬉しい
てか俺そんな有名人だったべか
「私、仁花ちゃんと同じクラスなんです。だからバレー部の試合、いつも観に行ってるんですよ」
「…そっか、試合観に来てくれてんの?恥ずかしいな〜俺、あんま出てないからさ」
「そんなことありません!菅原さんが出てる時、チームの雰囲気がふわっと明るくなるし…特に春高予選の青葉城西高校との試合の時、感動しすぎて泣きましたもん」
キーンコーンカーンコーン
昼休み終了を告げるチャイム
お前をこれほど恨めしいと思ったのは初めてだよ
もっともっと歩ちゃんと話したかったのに!
でも、初めて話したけど、俺のこと知ってくれてたし悪い感触じゃなかったよな
その日家に帰ってから、ペラペラと源氏物語を読み始めた。触りの部分は授業でもやったから、何となく知ってたけど、読み進めるうちに気づいてしまった
これは要するに光源氏というモテ男が老いも若きも未婚も既婚も義母も構わず、女性に夜這いしまくる話なんじゃないかって
で、1つの仮説が浮かび上がる
もしかして歩ちゃんもこんな風に強引に御簾を開けられて、手篭めにされたい願望があるのかもしれない
そして案外、遊び人なタイプが好きだったりするんだろうか…
ー数日後
今日は部活がオフだから、勉強して帰ろうと図書室に向かう
図書室に入ると彼女はおらず、俺は窓際の席で勉強を始めた
塾に行ってる人も多いから、図書室で受験勉強するのはかえって珍しく、人気が少ないから集中できる
フと窓の外に目をやると、中庭に見覚えのある姿
「歩ちゃん?」
彼女はサッカー部らしきユニフォームの2人に何か話しかけられている
俺の中に黒い感情が渦巻く
遊び人が好きなのかも
手篭めにされたい願望があるのかも
だったら俺が…
しばらくすると図書室に彼女が入ってきた