第10章 shotgun 二口
高校を卒業して春休みになってすぐ、車の免許を取るために教習所に通っていた
あと少しで本免の試験
てな時に路上教習で当て逃げされ、救急車で運ばれて俺は何故だか今、病院のベッドの上にいる
多分大した怪我ではないだろうけど、ムチウチがひどくて身体が起こせない
精密検査をして問題なけりゃ、多分1週間くらいで退院出来るだろうってことだけど…
だる
高校最後の春休みがコレかよ
んで、どこで聞きつけたか知んねぇけど、青根とか黄金川、しまいにゃ数年前に卒業したバレー部OBの先輩まで、連日見舞いに来てバカ騒ぎ
4人部屋だっつーの
「先輩たち暇なんですか?毎日俺んとこきて、彼女の1人もいなくて、後輩の見舞いしか行くとこないとか」
ベッドに仰向けになりながら毒を吐く
「うるっせぇ!可哀想な後輩見に来てやってんだろ!写真とろーぜ写真!弱ってる二口!!」
「しかも彼女とかお前もいないくせに!」
「そーだそーだ!」
今日も俺の病室は騒がしい
シャーーーッとカーテンが開けられ、看護師が現れる
「二口さん!昨日も言ったでしょ!ここはあなたの家じゃないんですから!ここは4人部屋で他の患者さんもおられるんだから静かにしてください!」
「はーい、すみませーん」
「検温の時間です、面会の方は少し外してください」
看護師が先輩達を促し、病室の外に出す
「はい、これ脇に挟んで」
体温計を差し出される
「肩が痛いから無理」
やろうと思えば出来るけど、注意された手前素直に言うことを聞く気にはなれない
彼女はフゥと溜め息をつくと、俺の前開きのボタンをプツプツと2つ外して体温計を脇に差し入れる
女にボタン外されるとか…なんか…
ちょっとムラムラする
向こうは仕事だから何とも思ってないだろうけど、工業高校で女慣れしてない俺からしたら、こんなに近くで若い女に世話されるなんて変な気持ちになって当然だろ
彼女は涼しい顔をして血圧計を俺の腕に巻き付け、バインダーに数値を記録している
昨日から口うるさく怒られてばっかで気づかなかったけど、よく見たら若い看護師だな
マスクしてるからよく分かんねぇけど、切長の二重に長いまつ毛、色も白いし…
「あんた、歳いくつなの?」
「え?23ですけど」
「ふーん、じゃあペーペーじゃん」
意地悪く言ってやる