第7章 strawberry 北
「信介、さっき農協さんから、冬の間イチゴ農家に手伝いに来て欲しいゆうて電話あったんやけど、行ってくれる?」
新米の出荷も終わって一息つく季節。別に日当くれるんやったら、他の農家の手伝いに行くのは構わんかった。
「なんなんその農家、オカン知り合いなん?」
「旦那さんの方はうちのお父さんとも知り合いで、ええ人やったんやけど、2年前に亡くなったんよ。そんで息子の代になってんけど、それがろくでもない息子らしくて、嫁さんに農家押し付けて自分は遊び歩いてるらしいわ」
「ふーん」
「40くらいの息子やのにえらい若い嫁さんらしいで。噂によるとなんや昔にお金貸した家の娘を奥さんが無理矢理嫁がせたとか」
「そんなややこしい家の手伝いかなんわ」
「行かんかったら、あの奥さんに何言われるか分からんし、信介頼むわ。そんでそんな40の道楽息子にも嫁さんがいんのに、あんたも浮いた話の1つもないんかいな?ばあちゃん生きてる間に孫見せたりや」
「やかましいわ」
最後に彼女がおったんはずいぶん昔、高3の時
その子は侑との初恋をこじらした子やった
それでもええからって言うて付き合った
2.3回セックスもした
そやけど結局侑に奪われた
侑が泣きながら土下座してきた時にはびっくりした
奪ってでも手に入れたかった言うて…
俺は結局そんな気持ちになるほど惚れてなかった
今も尻に敷かれて仲良うやってるみたいや
でもそん時思った
女はよう分からん
女は大事にしても応えてくれるか分からん
米は大事にして手入れした分だけ応えてくれる
その方が自分に合ってる
ー週末
おかんに言われたイチゴ農家の手伝いに向かう
車を停めてハウスの方に歩いて行くと
ハウスの中に人影
目が合う
人形?
ちゃう
人間や
ガラス玉みたいな目に白い肌
色素の薄い髪を一つに束ねて
こっちを見てる
「えらいすいませんなぁ」
ハッと我に返ると目の前に40くらいの男性が立ってる。この家の息子やろか
「あ、ああ 北言います。よろしくお願いします」
「あれはねぇ…見た目はいいですけど、キタサンが相手にするような女ちゃいますよ」
男性がニヤリと笑う
「アッチの方は全然。ローションないと濡れんし、マグロみたいに全く動かんのです。ダッチワイフとやってんのか思いますわ」