第6章 Premier amour 国見×及川
「さ、俺は忙しいから帰るし、後よろしくね」
及川さんはさっさと服を着て、何事もなかったかのように、部室から出て行った。
で、コイツどうしよう
とりあえずベンチの上に寝転ばせる
起きないー
我に返って改めて見渡すと床には精液と愛液と血
橘さんも…
部屋をキレイにすると、彼女の身体を拭き始めた
白い肌が穢れている
俺のジャージを上から被せた
そして唇にそっとキスをする
ごめんな
「…にみく…ん」
「おう」
気がついた彼女が身体を起こす
虚な瞳で立ち上がり、制服を着る
そしてヨロヨロしながら部室のドアに手をかける
「待って…家どこ?送ってく」
一言も話さないまま、彼女を自宅に送り届けた。
何か言えば良かったのだろうか
連絡先だけでもせめて
次の日彼女は普通に学校にきた
眼鏡は俺が壊したから、コンタクトで登校してきてクラスがざわついた。昨日の自分もそうだったくせに何故かモヤモヤした。そしてこの気持ちがなんなのか分からないまま…
彼女は転校していった
親の仕事の都合と聞いたけど
本当だったのだろうか
もしかしたら俺たちのせいで…
あれから10年が経った
あの時のあの気持ちが何だったのか
結局よく分からないままだった
この10年の間に彼女も出来たし、それ以上の人数とシた
でも…
2人でオナニーしてるような…
なんとも言えない感覚で
あの日の彼女との貪るような快楽を味わうことはなかった
彼女が名器だったのか、それとも俺たちの相性が良すぎたのか
それを確かめる術はない
昨日上司に
「お前も中堅行員なら、流行りの本の1冊や2冊読んどけ」
そう言われて、本屋に来た。新書や資格の本は読むけど、流行り物はあまり読まない。
売れ筋の棚の前に立つと、最近メディアでも取り沙汰されている[女子が濡れる官能小説]の新作がズラっと並んでいた。その隣には彼女の過去の作品。
ハツコイというタイトルのデビュー作を手に取った。
裏表紙に描かれた挿絵にクギズケになった。
そこに描かれていたのは
あの日見た俺の横顔だった。
ハツコイ
これがあの日の俺の気持ち
そして君も同じ気持ちだったんだ
ーend