第29章 devoted 木兎
一仕事終えた私は家に帰り、今日の資料のまとめをする
…はずが、中々手が進まない
木兎選手…調子狂うな
出会ったばっかりで、見た瞬間好きになったなんて急に言われても、頭が追いつかない
宮選手はいつもはそんな人じゃないって言ってたけど、やっぱりモテるんだろうし
って木兎選手がモテようが自分には関係ないのに、どうしてもプレー中の彼の姿が目に焼きついて離れない
「あー!やめやめ!気にしない!集中集中!!」
一人暮らしだから誰に言うわけでもないけれど、わざと大きな声を出して雑念を振り払い、ノートパソコンに向き直った
そうして数週間経ち、日程表が出来上がった
表紙はブラックジャッカルのロゴ
中を開くとメンバープロフィールとチームの情報、木兎選手と宮選手の写真と吹出しに組合員に向けたメッセージ、次のページには応援ツアーの日程という仕上りになった
私はそれを持って再び、体育館を訪れた
「歩サーン!!」
チームマネージャーに確認のための資料を手渡していると、木兎選手が両手を広げてこちらに向かって近づいてくる
「木兎選手、先日はインタビューのご協力いたダカありがとうございました」
「いいのいいの!それで歩さんの役に立てたなら…って、その木兎選手ってやめてくれない?なんか何ていうんだっけ、他人…他人…」
「他人行儀ですか?」
「そうそうそれ!タニンギョーギだからやめて!」
「じゃあ…木兎さん」
「いや、もう一声!」
「木兎くん…?」
「んー、まぁ今はそれでいっか。てかさー、歩さん今まで俺の試合見たことある?」
「…ごめんなさい、ちょっと今までなくて」
「まじかー、じゃあさ次から絶対観に来て!」
「え、あ…はい」
圧がすごい
「絶対ハマるから!」
自信に満ち溢れた表情で木兎くんは、自分の胸をドンと叩く
そしてそのまま私を指差して
「バレーにも俺にも」
と言って笑った