第29章 devoted 木兎
「へ?歳とかどうでもいいから、それより歩さん結婚してんの?」
また結婚ってゆう…何なのこの人は?
悪かったわね、アラサーで独身で
「してませんけど」
「じゃあやっぱ俺と結婚しよう」
「そやからさっきから何で結婚しようとすんの?!どうゆうことなん?!」
宮選手が木兎選手にツッコむ
いや、私も全く同じことを思っていますが…
「何でって…したいから!見た瞬間好きになったんだよね」
木兎選手は曇りのない真っ直ぐな瞳で見つめてくる
このままではなし崩しになってしまいそうで、私はコホンと咳払いを一つして
「とりあえず、今日はメッセージ欄の説明をさせていただきますね」
と仕事に集中することにした
「あはは、ぼっくん全然相手にされてへんやん!素無視やん!」
「ぜんっぜん大丈夫、すぐ好きにさせるから」
自信に満ち溢れた彼にドキドキするけど、もしかしたらアラサー独身の私を揶揄ってるだけかもしれないし
あんまり真に受けるのはやめよう
「ここら辺にお二人の写真を入れますので、そこから吹き出しを挿入して…みなさん応援よろしくお願いします的なメッセージをここに書こうと思います。5行くらいなんですけど、もう今考えますか?」
「そうやなぁ、今パパッと考えてしまおうか」
「俺、その前に便所!アイスコーヒーで腹冷えちまった」
そう言って木兎選手は慌ただしく立ち上がり、トイレに行ってしまった
嵐のような人だなぁ
彼の立ち去った方を茫と見つめていると
「ぼっくんのこと気になる?」
ニヤニヤした宮選手が訊いてくる
「いえ、ただ…自由だなと…いつもあんな感じですか?」
「そうやなぁ、いつも騒がしいのは騒がしい。でも、こんなん初めてやで」
「どんなんですか?」
「初対面の女の子に求婚してんの」
「そうなんですか?私てっきりいつもそうなのかと」
「全然!ただ腹立つくらいモテよるのはモテよるけどな!ファン感謝祭ん時なんか目立つのもあってすごい人気で…」
「そうですか、やっぱモテてるんですね」
出会ったばかりで自分には関係ないって分かってるのに、微妙に心がざわつく
「あ、なにー?気になる感じー?」
宮選手は意味深な表情で私を見てくる
「そ、そんなことないです!あ、木兎選手も帰ってきましたし、進めていきますよ」