第29章 devoted 木兎
「…ぼっくん、ほんま目立つの好きやなぁ」
ミミズクみたいな斬新な髪型の選手に、関西弁の選手がツッコむ
「ツムツムも一緒にメッセージやろうぜ!あ、でも橘さんと結婚すんのは俺だからな」
「ふぇ?!」
結婚?!?!
なんの話だろう…
「こら木兎、橘さんは結婚相手を探しに来られたわけじゃないんだぞ」
木兎と呼ばれたミミズクヘッドの彼が嗜められると、他のチームメイトは爆笑している
い、いつもこんな感じなのかしら…
彼らのジョークはよく分からないけれど、楽しそうだ
「すみませんね、こいつらいつも男ばっかりでいるもんで…じゃあ、メッセージの協力は木兎と宮で頼んだぞ。では橘さん、よろしくお願いします」
「ありがとうございます。それでは練習が終わるまで、少し待たせてもらいますね」
私は体育館の隅で、選手のオフィシャルプロフィールをプリントアウトした資料を拡げながら練習風景を見ていた
「…さっきのが木兎光太郎選手、12番OH…」
OHって何なんだろう…我が社が企業チームを保有しているにも関わらず、ほとんど見たことなかったし、バレーボールって全然知らないや
そう思ってたのに…
キュキュッ
シューズが体育館の床に擦れる音がして顔を上げると、木兎選手がドンッと床を踏み締め、空高く跳び上がった
ドォォォォンッ
轟音と共に目にも止まらぬ速さのボールが床に突き刺さった
「ヘイヘイヘーーーイ!!!」
あまりの高さ、速さに目を奪われていると木兎選手はこちらを向いて、私の方を指差す仕草をする
それがどういう意図なのかは分からないけれど、久しぶりにドキドキと胸が高鳴るのを感じた
練習が終わるのを待って、体育館の近くのカフェに入る
「この度はご協力いただいてありがとうございます。改めまして私、本社の総合企画部で主任をしております橘と申します」
2人にそれぞれ名刺を渡す
「へぇー歩チャンて言うの?若いのに主任さんとか凄いんやなぁ」
「いえ、そんなに若くないですよ。お二人より少し歳上です」
さっきオフィシャルプロフィールで確認したもん
3つくらい歳下なのに、スポーツしてることもあってか2人とも体格いいし、凄く頼もしく見える
「歳上なん?全然見えへんなぁ、ぼっくん?」