第25章 reward 赤葦
「そうですね、俺も高校の時バレーやってて…でも結局辞めてしまって今この仕事をしているので、先生のおっしゃったこと、結構グッときました」
俺がそう言うと橘さんはウンウンと頷いた
「あの漫画の主人公のモデル、赤葦くんの先輩なんでしょ?ほら、宇内先生と一緒に取材させてもらったって言ってた」
「そうです、木兎さんって言うんですけど…木兎さんはブレずに夢を叶えてプロのバレーボール選手になりましたけどね。木兎さんは高校生の時から、会場を味方につけるスター性のある選手で、彼にトスをあげるのはとても気持ちよかったです」
「そうだったんだ、赤葦くんにそんな風に言わせる木兎さんに一度会ってみたいな〜…ねぇ、今度試合一緒に観に連れてってよ」
橘さんに言われて複雑な気持ちになる
そうだよな…俺みたいな、しがない編集者より、木兎さんのようなスター選手が彼女にはお似合いだと思う
「…橘さんもやっぱり、木兎さんみたいなスター性がある華やかなスポーツマンがタイプなんですね」
「え、ちがうちがう!赤葦くんみたいな良い男にそこまで言わせる木兎さんってどんな人かなって思っただけで…」
「え…それってどういう」
「あ、やだ…ちょっと飲みすぎたかな、私何言ってんだろ」
彼女はパタパタと手で顔を仰ぐ仕草をして、席から立ち上がり俺に背を向ける
良い男?って今言ったよな
期待していいの?
今なら言える気がする…
「橘さん…」
彼女の後ろ姿に声をかける
「ん?」
「俺、ご褒美まだ貰ってません」
「…そうだね、どうする?今から焼肉でも行く?それか回らないお寿司?フレンチのフルコースだと日を改めて…
自分の気持ちを誤魔化すように、後ろを向いたまま早口で話す彼女を後ろから抱きしめた
「わっ…あっ…赤葦くん…」
「橘さんがいいです」
「え?」
「ご褒美、橘さんが欲しいです」
耳元に唇を近づけて囁くと、彼女の耳たぶが紅く染まる
「なっ…何言って…赤葦くん酔っ払ってるでしょ?!」
「お酒は飲みましたが、正気です」
そう言いながら紅く染まる耳たぶを甘噛みする
「ひぁ…赤葦く…ダメ」