第20章 Insane 研磨
おれと歩は幼なじみで、小さい頃から一緒だった
人見知りで無口なおれに、あれこれ世話を焼いてくれるしっかり者の歩のことをずっと好きだった
でもね、好きになればなるほど自分の中に不思議な感情が芽生えてくるんだ
いつも明るくてしっかり者の歩が、泣き叫ぶ姿とか怒り狂う姿とか見たいな、どんな風になるんだろうとか、わけもわかんなくなるほど乱れて堕ちていく姿とか…
そんな不健全なことを考えながら窓の外を見ていると、後ろから聞き慣れた声がした
「…んま、研磨!聞いてる?!」
わー、ご本人じゃん
脳内を覗き見られたわけではないけど、何となくバツが悪い
「委員会、今日の放課後あるらしいけど、研磨部活だよね?どうするの?」
「…あ、忘れてた」
そう答えると歩は呆れたように溜息をつく
「もうっ、じゃあ私から委員長に言っといてあげるから部活帰りに資料取りに寄ってよね!」
「歩いくよー!」
遠くから友達に呼ばれて、彼女は去っていった
「歩って孤爪くんと仲良いんだね、意外〜」
「家が近所だからね」
そんな会話が廊下の方から聞こえてきた
おれたちが同じ委員会のペアになったのは偶然だけど、心底良かったと思う
だって今日の部活帰り、歩ん家に行っていいってことだよね
高校生になってからは部活も忙しかったし、そんなに頻繁に行き来しなくなってたから、彼女の家に行くとなると心が浮ついて、もはや部活どころじゃなかった
歩はおれの幼なじみだから、自然クロとも仲が良かった
ってか歩は明らかにクロのことが好きだった
一つ歳上のクロのことを歩は子供の頃から
「てっちゃん」と呼んでいた
高校生になって、ますます美しくなる歩に
「てっちゃん」
と呼びかけられて、クロの方も満更でもない様子で…
放っておいたらあの2人は普通にくっつきそうだった
でもそれはだめだよ
歩はおれのだから
だから分からせてあげなくちゃ
まずは本人に
おれは歩の全部が見たいし全部が欲しい
今日、やるしかない