第3章 adultère 赤葦
出版社勤務の俺は5年前少年漫画誌の担当をしていた
そこで宇内先生のバレーボール漫画のヒットが評価され、順調に出世をし、充実した日々を送っていた。
2年前紹介で知り合った女性と結婚し、共働きというありふれた普通の人生
ーあの日までは
「え、異動ですか?」
上司に呼ばれ、異動を告げられる。何でも現在SNSやマスコミに取り沙汰されている、新進気鋭の小説家の担当になるというのだ。
俺はあまり気乗りしなかった
何故ならその小説というのは官能小説であるからだ
女子が濡れる官能小説
として大人気のその小説家の書く男性たちは皆セクシーで魅力的なのだという。絵も得意としているようで、自らが描く挿絵の美しさも話題の一因らしい。人気に火がつき、わが出版社としても次の作品をと期待しているのだが、スランプだか何だかで上手くいっていないようだ。そこで連載打ち切り漫画家を売れっ子にした手腕が買われ、俺が担当することになったというわけだ。
「早速彼女の元へ行ってくれ、原稿を貰うまでは帰ってくるな。一晩でも粘れ」
そう上司に言われ、ハァとため息をつく
携帯を取り出し妻に連絡をした
『部署異動になって、今日は遅くなりそう
泊まりになるかも、先に寝てて」
彼女からは了解のスタンプ
俺は重い足取りで担当作家の元へ向かった