第6章 そして静かに眠る
「何言ってんの…父上らしくもない…」
形容しがたい気持ちに涙が溢れる
家族から向けられていた感情に違いに驚く気持ち
その反面の安堵
なら何故もっと早くに言ってくれなかったのかと言う焦れったい気持ち
しかし、それら全てが家族への愛情に変わっていく
「最後にこんな手紙…っ…」
思いもしなかった
裁縫どころか家の事すらできない父親が
刺繍だなんて…
一時期怪我などほとんどしないような父上が
やたら手に絆創膏を貼っていたり
目の下にくまをつくっていたことがあった
あれはこのために刺繍を練習していたのか
想像するだけでもおかしな光景だ
「ひおりちゃんのお父様…雅治(まさはる)さんは
最後まで戦っていたんだよ
僕にも頭を下げられた
娘をどうか助けてください
娘の代わりに自分の命を差し出しますって
それでも…
ひおりちゃんを差し出さないのなら
上が直接手を下すって言うものだから
力の弱い雅治さん一族はどうしようもなかったんだ
少しでも長く何も無い日常を送らせてあげるには
これしかないと思ったのかもね」
「私の知らないところでそんなことが…」
着物をぎゅっと抱きしめると
ほんのりと家族の香りがする
きっと父上と母上が一生懸命に刺繍をしてくれた時に移ったのだろう
「私こんなにも皆に愛されてたのですね…」
皆が分けてくれた気持ちが胸に熱く響く
ずっと私を嫌っていたと思っていた両親も
解放されたがっていると思っていた式神も
私の思っていたよりもずっと
私の事を愛してくれていたのだと思うと
なんだがあたたかい気持ちにさせられる
「僕もひおりちゃんの事、愛してるよ」