第1章 呪術廻戦*狗巻棘 「盗人少年」
「よし。じゃあ、身の回りの男についてどう思ってるか1人ずつ言ってけ。最初は1年から。まずは伏黒だな。」
「私だけっていうのがなんか理不尽な気するけど、まぁ答えますよ。伏黒くんねぇ。あの子はすごいと思う、かな。式神もそうだし、いろいろ考え方とかも。ほら、虎杖くんのことさ、五条先生に私情で死なせたくないって言ったんでしょ?すごいよね。」
「次、虎杖な。」
「虎杖くんは、うん。やっぱり彼もすごいよ。宿儺の器なんて相当なポテンシャルがないとできないだろうし、なんか、子犬みたいだし。」
「子犬?」
急に出た意味のわからない言葉に野薔薇が聞き返した。
「そう、子犬。なんかさ、遠くに居ても『せーんぱーい』って手振って走ってくることがたまにあるんだけどさ、もう耳と尻尾が見えるね。あれは紛れもない子犬だよ。かわいい……。あ、かわいいっていうのは恋愛的な意味含んでないからね!ペット的な、弟的な意味ね。」
次はついに棘である。真希は不自然にならないように言った。
「パンダは人間じゃないから飛ばすぞ。次、棘。棘のことはどう思ってる?」
「棘ねぇ。全員同じ答えになっちゃってるかもだけど、棘もすごい。呪言師っていろいろ大変だろうなって思う。語彙を絞ってるのとかも。最初は普通に不思議な人だって思ってたよ。おにぎりの具言われたって意味わかんないじゃん。まぁ、最近は何言おうとしてるか分かるようになったけどさ。あ、そう。私のものを盗む理由だけは未だに謎。高校生活最大のミステリー。」
「志弦さ、毎日のようになんか盗まれて棘のこと嫌いになったりしねぇの?」
「それはないでしょ。大切な仲間だもん。それに、棘がなんの理由もなくただのイタズラで盗むとかあり得ないでしょ。私が理解できてないだけで、きっと棘にもいろいろ理由があるんだって思うから嫌いにはならないよ。」
「なるほど。その考え方すごい。私だったら、私のものを虎杖とか伏黒が盗んだら即殴る。理由とか関係なく。」
盗まれることを想像したのか、野薔薇の眉間には皺が寄っていた。
と、そこで昼休み終了を知らせるチャイムがなった。
3人で急いで片付けをし、それぞれ教室へと戻った。