第3章 ダイヤのA*沢村栄純 「ムカつく先輩のお姉様」
「お姉様!俺、沢村栄純と申します!」
「ピッチャーの子だよね?さっきブルペン覗いた時に投げてた子。」
「はい!」
「こいつうるさいから無視していいよ、姉ちゃん。」
御幸先輩は俺の頭をグリグリしながらそう言った。
「いたっ!痛い!やめろ、御幸一也!!」
「俺、先輩なんだけど。」
「一也、懐かれてやんの。」
別に俺は懐いてるつもりはないけどそう見えたらしく、志弦さんは笑い出した。ツボに入ったらしい志弦さんはしばらくそのまま笑い続けてた。
「姉ちゃん、ツボよくわかんなくていつも変なとこでツボるから無視していいよ。」
御幸先輩はそう言って志弦さんが持ってきたであろう差し入れのところへ行ってしまった。
「君は一也のこと嫌い?」
一通り笑い終わった志弦さんにそう聞かれて戸惑った。さっきは懐いてるって言ってたのに。
「嫌いっていうか、信用ならないです。いろいろ騙されたし。」
「あぁ、あいつはそういう奴だからね。でも、悪い子じゃないんだよ?本当はすごく優しい子なの。ただ、ちょっと捻くれてるだけ。だから嫌いにはならないであげてね。」
「ピッチャーとしては尊敬してます。」
俺が照れてそう言うと、志弦さんは俺の頭を撫でながら、
「ふふ、そっか。ありがとう。」
と言った。
撫でられたのは、なんか子供扱いされてるみたいで嫌だったけど、不快ではなかった。
自分にも姉がいたらこんな感じなのかなと思ったりもした。
「志弦さん、また来ますか?」
気づくと俺はそう言っていた。
「うーん、どうだろう。私も大学とバイトがあるからそんなに暇ではないんだよね。ただ、公式試合はできる限り観に行くよ。去年は全然来れなかったから行きたいなって思ってるの。私の知ってる学年は今年が最後だからね。えっと、沢村くんだっけ?君は試合出るの?」
「俺はエースになる男ですから!ボスも自分に期待してくださっているので!志弦さんも期待していてください!」
「ボス?監督のことかな?……そっか。じゃあ沢村くんの活躍にも期待しておくね。じゃあまた。練習頑張れ。」
志弦さんはそう言ってからもう一度御幸先輩と何か話してから帰っていった。