第2章 鋼の錬金術師*エドワード・エルリック 「その表情の下に」
「いや、もっと他に方法あるだろ。考えろよ。」
「私はこれが最善だと思ってます。この考えが不服なら自分で考えてください。」
エドは考えた。
本当にアルの中に入ることが嫌で、他に作は絶対あるはずだ!と自分に言い聞かせた。
だが、普段はいろいろと機転のきく頭は全くいい考えを浮かばせてはくれない。
「もうわかったよ!!入ればいいんだろ?早く布買ってこい!!!」
エドは半ギレでそう叫んだ。
志弦はそんなエドを見て、最初は大声に驚いた顔をしたが、すぐに微笑んで頷き布を買いに行った。
「志弦さん、また笑ったね。少し表情筋が動くようになってきたってことだよね?」
「そーなんじゃね?しらねぇーし。」
アルは嬉しそうにそう言ったが、エドはアルの中に入らなければならないことで不貞腐れているので棒読みである。
「このまま志弦さんが普通に笑ったりできるようになるといいね。」
「まぁ、そうだな。」
エドはアルの言葉に表情を崩さず答えたが、内心は嬉しいと思っていた。
アルもそんな兄の心境がわかったのか、微笑んだ。
しばらくすると、相当大きめな布を持った志弦が帰ってきた。
「こんなもんでどうでしょうか。中身は見えないですし、いい大きさの布を買ってきたなと我ながらに思うのですが。」
アルの体に布を当てて志弦はそう言った。
「うん。これなら兄さんが入っててもわからないね。」
「そうでしょう。ではエドワードさん、中へどうぞ。」
少し微笑んで志弦が言った。エドはその微笑みが逆に怖かった。
だって今まで無表情だった奴が笑ってるだけでも違和感なのに笑ってる理由が自分的に嫌なこと(弟の中に入る)なのだから。