第2章 鋼の錬金術師*エドワード・エルリック 「その表情の下に」
しばらく説得を繰り返し、なんとか解放してもらった時には日が暮れかけていた。
志弦はエドたちを追いかけて賊がいるという場所まで走った。
これでは護衛として一緒にいる意味がない。
「な、なにこれ…」
志弦は思わずそうつぶやいた。
賊がいるとされた建物は跡形もなく崩れ去っている。
周りには気を失った賊が転がっていた。
「エドワードさん、アルフォンスさん。どこですか!?」
志弦にしては珍しく大声で叫んだ。
それでも望む答えは返ってこなかった。
志弦は歩き続けた。
エドたちを探して。
「エドワードさん!アルフォンスさん!」
感情を押し殺そうと決めたあの日から志弦は本当に感情を殺した。
何かを感じることはなかった。
それなのにエルリック兄弟と出会ってからおかしい。
2人を殺そうとした奴に対して怒りを感じた。
そして今も。
今までずっと感じたことのないほどの焦りを感じている。