第2章 鋼の錬金術師*エドワード・エルリック 「その表情の下に」
「あいつの敬語は許してやってくれ。2人も知ってるだろうけど、あいつはまだ子供だ。なのに少尉という地位で軍に所属してる。周りは年上だらけなのに、その中には地位が下の人もいるんだ。年齢が上だから、という理由でしづが敬語を使うと地位が下の人たちはしづに対して嫌味か?と聞く。ありえねぇだろ。でもあいつが前にいた部署はそれが当たり前の会話になってたんだよ。毎日嫌味だろ?って言われていじめられてたんだな。」
ヒューズは隣の志弦に聞こえないように声を潜めて言った。
「それからしづはどんな相手にも敬語で、表情を崩さなくなった。というより、敬語以外が話せなくて、表情も動かせなくなったんだろうな。だからロイが自分の部下にって引き取ったんだ。それがちょうど一年くらい前だな。」
「ふーん」
エドはつまんなそうにその話を聞いていた。
でも、弟であるアルや、付き合いの長いヒューズはわかっていた。エドが志弦のことを少しは可哀想だと思ったり、心配していることを。
エドは優しいからきっと、志弦にこれから敬語や表情のことでとやかく言うことはないだろう。