第2章 鋼の錬金術師*エドワード・エルリック 「その表情の下に」
列車へと乗り込む兄弟を遠目から見ていた志弦は公衆電話で今回の任務を与えた上司へと電話していた。
「マスタング大佐、こちら小幡です。大佐の予想通り兄の方が今回の護衛に反対したので、予定通り遠くから見ていることにしました。」
『やはりか。彼らも面識のある中尉などを行かせた方がいいかとも思ったんだが、中尉がいなくなるとこちらの仕事にも影響するのでね。そこで年齢も近いしづに任せることにしたんだが、それが間違いだったか。』
「その言い方だと、私がいなくても仕事に影響しないということですね。わかりました。私は大佐に必要とされていない、そういうことですね。こういうことをここで言うのは憚られますが、私小幡志弦はロイ・マスタングに忠誠を誓ったのですが、それは間違いだったようです。」
『しづ、お前は冗談すらそのテンションで言うのか。その感情の起伏がない喋り方はいろいろと誤解を招くぞ?どうせ顔も真顔でその喋り方で鋼のと話したんだろう。ちゃんとにこやかに話すように指示したはずだが?』
志弦は確かにそんなことも言ってたような、、と思い出す。
しかし、既に終わったことなのでもうどうしようもない。
「そもそも申し上げます。私に『にこやかに』という指示を出した大佐にも多少の責任はあるのではないでしょうか。」
『私に罪をなすりつけるな。とにかく、彼らの護衛と監視、頼んだぞ。周りにも十分警戒してくれ。』
「了解しました。」
志弦は電話を切り、エルリック兄弟が見える位置に座席を確保して座った。