第1章 呪術廻戦*狗巻棘 「盗人少年」
「"止まれ"」
棘は目に入った呪霊に向かって呪言で動きを止めた。
そしてその呪霊の目線にいたのは、怪我をした志弦だった。
意識はあるようで、棘を認識した瞬間に唇を噛み締めて肩を震わせた。
「と、とげ……棘、」
「高菜!!!」
棘は志弦に駆け寄って怪我の具合を確認すると、呪霊に向かって「"爆ぜろ"」と言った。
推定二級の呪霊だった。
棘は志弦の傷に障るといけないので、動かすことを躊躇していた。
「いくら?明太子?」
「だ、大丈夫……。ほんと、死ぬかと、思った。棘が来てくれなきゃ死んでたよ。ありがとう。」
「おかか!」
「ふふ、棘は優しいね。助けてくれた時の棘、すごいかっこよかったよ。」
そう微笑む志弦に、棘は一気に熱が顔に集まるのを感じた。
可愛すぎる。
「ツナ。」
『好き。』
そう伝えたつもりだった。でもきっと志弦には伝わらない。
自分は愛しい人に愛の言葉を紡ぐことすらできない。情けない。
「それさ、いつから?私は全然気づけなかった。真希達にいろいろ手助けしてもらって初めて気づけたことなの。」
志弦の言うことの意味が分からず棘は首をコテンと傾けた。
「伝わってないと思ってるでしょ?私ね、棘の言ってること理解できるようになったみたい。」
棘は志弦の言うことの意味をだんだんと理解してきた。
徐々に顔が熱くなる。