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短編集

第1章 呪術廻戦*狗巻棘 「盗人少年」


そして次の日の放課後、棘は緊張して教室を見回した。
まぁ普段からスカスカの教室は、見回さなくても教室の中に誰がいるかは一目瞭然である。
しかし、棘は見回さずにはいられなかった。なぜなら、約束したはずの志弦が教室にいないのだ。

理由はわかっている。志弦は今日、任務で朝からいなかったのだ。
しかし、いくらなんでも遅すぎる。
今日の任務地はそんなに遠くはない。しかも、準二級の志弦にとっては楽勝の任務のはず。それがこんなに時間がかかるはずがない。
棘は不安で不安でたまらなくなった。どんなに楽勝な任務でも、少しのミスが致命傷になるのは呪術師として当たり前のことである。

それに気づいた瞬間、棘は走っていた。五条にメールで今日の志弦の任務地を聞いた。すぐに来た返信を見て棘はそこに向かった。
近づくにつれて呪霊の気配が強まった。どう考えても準二級の志弦が倒せるような気配じゃない。
棘は走った。ただひたすらに走った。
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