第1章 呪術廻戦*狗巻棘 「盗人少年」
「どうした?」
「棘ってさ、私の荷物盗んでくるじゃん。もしかして私、棘に嫌われてる?」
ここでまたしても変な勘違いをする鈍感娘に真希たちは呆れた。
呆れすぎてため息すら出てこない。
もはや口がポカンと開いたまま固まっている状態だ。
「えっと、私なら、嫌いな人の物には触りたくないし、なるべく遠ざけたいので自分から盗むなんてことしないと思うんですけど。だから狗巻先輩も志弦さんのこと嫌いなわけじゃないと思います。」
横で真希は野薔薇にナイスと耳打ちした。
野薔薇の言葉に志弦は少し気を取り直したらしく、笑顔になった。
「そうだよね。私も嫌いな人の物は触りたくないや。」
その日の放課後、野薔薇は適当な理由をつけて志弦を高専から連れ出した。
その隙に真希が棘へ助言をするためである。
「ちょいちょい、棘おいで。」
真希は廊下の角から棘に手招きした。
普段の真希からは予想がつかない行動に不安になりつつ棘は真希の元へ行った。そして、棘と一緒にいたパンダもついて行った。
「今日、志弦が棘に嫌われてるかもしれないって言ってたぞ。」
「おかか!!!」
「なんか、持ち物を盗むってことは、嫌われてるのかなってさ。とにかく棘、告るなら早く告れ。あいつの気が変わる前にな。今日のところはそんなことないだろって諭した。でも、これ以上嫌われてるかもしれない誤解されるのも時間の問題だ。嫌われてないって思ってる今がチャンスだぞ?」
「そうだそうだ、告っちまえよ。」
パンダも棘の脇を突きながら茶化すように言った。
棘は少し考えてから覚悟を決めたようで、明日の放課後に呼び出すことに決めたらしい。
決意したら行動は早く、早速志弦にメールしていた。
『明日の放課後、話があるから教室に残っててほしい。』
少ししてから返信が来た。
『了解!』