第7章 残されていた愛 繋がる愛
わたしは驚いている。
一瞬うたた寝をしてしまったのだけど
わたしが恋雪さんの声を聞いた長夢から目覚めたあの日からわたしの血を少しずつ飲んでいた猗窩座が、
寝息を立てて眠っている。
そして、最初はあまり気づかなかったけど、
あれから半年経って猗窩座の外見で一番の特徴である全身の藍色の線が薄くなってきている。
だからといって苦しがったり鬼として弱体化しているわけでもない。
むしろ、呼吸を覚えたことによって強くなっているような気さえする。
外見上の特性は一番先に消えるのか……
目の色と脳機能、強さ……鬼舞辻が求める優先順位が低いものから先に消えていくのかもしれない。
そう思って、気持ち良さそうに眠る猗窩座を見つめていた。
「早く青空の下を共に歩けるようになりたいです……。」
顔の線を指でなぞったり、紅梅色の髪の毛、睫に触れてみる。
ピクリとして猫みたいに捩るからかわいいと思ってしまう。
皮膚の感触も、少し人間らしくなってきて血色が良くてさらさらしてる。
人間に戻ることは嬉しいのに見慣れた特徴がどんどん変わるのも少し寂しい気もして腕の中に自分からはいって甘えてみた。
すると、起こしてしまったのか腕に力が入ってぎゅうと心臓ごと抱き締められて苦しいけど嬉しい。
「起きてるの?」
「寝てる。」
「寝てる人は話さないですよ?」
「寝言だ。」
目を閉じたままフワッと笑って、またわたしを抱き締める。
「起こしちゃいましたか?」
「少し眠った。鬼になってはじめて寝た気がする。」
「嬉しいの?」
「あぁ。不安もあるがな。
人間に戻るまで、自分のからだがどうなっていくのか
死なずに何も失わずに戻れるのかとか、
人間に戻った自分の力がどれだけのものなのか……」
「何があってもわたしの中では何も変わりません。
一緒に乗り越えていきましょう。」
「あぁ。」