第7章 残されていた愛 繋がる愛
桜華は、自分が誰かに守ってもらうという概念はないらしい。
人間に戻ることで、どんな結果が訪れるのか解らない俺でも、
"何があってもわたしの中では何も変わりません。"
という。
強さを求めて、弱い自分を徹底的に排除してきたのに、その弱い自分に陥るかもしれない俺に対して寛容でいる。
排除してきた弱い自分を拾い上げて肯定して俺に戻して……
俺はアイツに勝たなきゃいけないのに、そのためにまだ強くなりたいのに、それに対しての焦りすら桜華の凪に受け入れられ打ち消されるようだ。
それなのに、地面にしっかり足がついた、心の奥からわき上がる力がある。
俺が狂うほどに求めてきた強さの根元はなんだったのだろう。
なぜかそれも、既に桜華は知っているのではと思うことがある。
勿論俺が人間として生きていた年代が違うからそういうことはありえない。
それに…
自分の中でしか存在しないものは、自分で気づいたり思い出すべき事。
教えられて思い出すような軽いものではない。
忘れた記憶が、いろいろなことが引き金となって喉元まで思い出しかけているのに
思い出したいようで思い出したくない。
そんな俺の状態を
近くにいながら
広い視野が得られるような高い場所で
不安も抱えながら優しく見守っているような気がする。
桜華がそんな人間だからこそ
あの男につけられた名前で呼んで欲しくない
最近よく思う。
だからって人間の名前を思い出せない。
思い出したいのに思い出せない。
人間の時の名前で呼んで欲しい。
思い出せないくせに………