第6章 その身体に刻まれた過去
目が覚めたのは鉄格子の中。
服は見慣れない真っ黒でテカテカした黒い面積が少ない布で隠すようなチューブトップに深いスリッド入りのミニスカート、黒くて高いヒール。
体は妙にスッキリしてて洗われているようで、髪も西洋風に結われ、格子の壁に写った自分の顔がド派手に塗られてた。
首には番号を書いたプレートが首輪につけられている。
手枷と足枷もされて、自由なのは顔だけだ。
趣味の悪い男のためのような格好。どこぞの西洋風の娼婦のようで気色悪かった。
3面壁で見えないが両隣に女性がいるのを感じた。
あぁ、誰かにそういう目的で売られるんだ………。
家の教育方針で社会の表裏の様々な世界を聞かされいたがゆえに察しがついてしまった。
でも、
全てがどうでも良かった。
全てに気力がもうなかった。湧かなかった。
でも、このときは、更なる女としての地獄の沼にはいることがよく解っていなかった。
なにも見る気もしなくてずっと床を見ていたが、
何度か裏社会に染まった汚い男が品定めをするように足から頭までじっとりと見られている気がした。
中には格子の中に男が入り顔を掴まれて無理矢理汚い顔を見せられた。
体もさわられたし、見る輩もいた。
もう、完全にそういう道具になり下がっていた。
そして、だれかわからない30代くらいの男の集団に買われてペットを受け渡すかのように人一人が座ってようやく入るような檻に入れられ、木の箱に入れられた。
通気孔から漏れる光は空の青を見ることなく、貨車で引かれる音がゴロゴロと聞こえるだけ。
ただ、枯れたと思っていた涙がまだまだ溢れてきて止まらなくなった。
家族も親族もなくして、
息つく間もなくここに連れてこられ
精神が著しく崩壊している状態で
ここまで落ちた自分はもう、命を燃やして戦う彼らと同じ空間にいることはできない。
彼らがもう手の届かないところへ突き落とされてしまった。
もう自分に将来を見ることはないのだと諦めた。
光はもう遠いものになっていった。